序章

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 その日を境に世界は〝色〟を失った。  澄み晴れた蒼天の空を失った。  照らし出す陽の光を失った。  累々と及んでいた深緑の森林群を失った。  溢れんばかりの人々の肌を多量に失った。  そう、世界は滅んだ。  後に残ったのは、足跡という名の文明の残骸と、色を喪失した灰の地上と空の暗雲が末広がる地獄と、奇跡的に生還を許された僅かな人類だけであった。  終末とは突如として訪れる事象であると聖書にも記されている。が、しかし次に訪れるはずの復活という希望は、姿を見せずにいた。なんということだろう、神はただ世を照覧するだけの無慈悲なのか。  この劣悪な環境をなぜ許したのか。これはルシファーの差し金かーーーが、しかし、ただ一つの事実を述べれば、清廉な少女の姿をしたおぞましい悪魔が元凶だということだ。  信じ難い話だが、世界を破砕したのは歳も11の子供。名はアリス。   そして生者は、すべからくこう渾名した「アリス・イン・ジェノサイド」と。
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