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ヘドロ混じりの豪雨が視界を文字通り遮断した。これではビークルでも前進は至難。外界への進出からわずか4時間で、第1次武装観測隊3名の移動は止まった。ぼくはビークルの操縦ハンドル握りながら無心にして、この不愉快をやり過ごそうとしていた。
「で、この泥の嵐はいつ終わるわけ?」
ぼくの隣に座る、隊員の1人であるエルザが憤慨をあらわにして、思考停止状態だったぼくに迫った。
「それは分からない。昔と今では自然環境に大きな差異がある。最初にブリーフィングしたはずだけど?」
説明するのが億劫だったぼくは、淡々とあしらった。それが先方の立腹を助長するのを承知で。
「なにそれ!? あんたが一番詳しいんだから把握しときなさいよ! もう最悪!! 全然やまないじゃない!!!」
エルザが比較的短気だとは認識していたが、こういう状況ではそれが多分に迷惑だと理解を新たにした今日この頃である。
まあ気持ちはわからんでもないけど。
ともかく、こんな極限状態が連発するようでは、まともな収穫は期待できないし、そもそも生還できるのかさえ、はなはだ疑問だ。これは貧乏くじを引いたと自負できる。
「そうがなるなよエルザ。隊長だってしっかり作戦を検討してるよ」
もう1人の隊員マティアスがあざといフォローを入れてくれた。正直ありがた迷惑だ。
今後しばらくをこの2人と過ごすのは、不安と同居するようなもの。ヴィオスの勅命とはいえ、実に難儀な話だ。
「それで隊長。提案なんだが、俺が外に出て偵察を試みてもいいか? ヘドロぐらい俺はへっちゃらだ」
そうマティアスがぼくに耳打ちした。
「それはダメだよ。この周辺は核兵器炸裂による放射能汚染地域が点在しているし、この泥の雨がそこからもたらされたとしたら、防護服を着用していたとしても、身体に悪影響が及ぶかもしれない。無茶は禁物だよ」
「そうか・・・。わかった」
マティアスは無念そうに言った。目視の偵察は確かに重要だ。なぜなら電子索敵、すなわちレーダーでは捕捉できない存在が外界にいるからだ。
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