序章 惑星調査記録

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「まぁ当たらなければいいか。それで外の状況は。現地の人が拾ってくれたあと変化があった?」  サイドアームが持ってきたカップを受け取り、少し温めのお茶をちびちびと飲みながら、一番の関心事を確認する。 『現地生物による原始的な移動機構で変わらず移動中です。おおよその測定となりますが本船より直線距離で800キロは離れております』 「あぁそれじゃ完全に未探索領域だね。原始的な移動機構だと長いから、『馬車』呼称に変更で。あと翻訳が出来た言語も表示を頼むね」  メインモニター画面を見ればガタゴトとゆれている暗がりの狭い空間。周囲にはすすり泣いたり、閉ざされた扉を必死に叩く幼い少女達のわめき声が聞こえている。  現地語翻訳学習機能をフル稼働させているが、語集が少なく、意味の無い物が多いのであまり効率的ではない。  なにより精神的によろしくないのは、現地語で『おかあさん』『助けて』『出して』という繰り返される言葉がトップ3を彩っているあたりだ。 「ミーさんこれってさ。やっぱり人買いってやつかな?」  記憶から引っ張り出して思い出したその単語は、歴史を千数百年以上は遡らねばならず、一般歴史授業では出てこない類いの物だ。  それこそ古代文明マニアで専門講義を受講していたリオだからこそ、すぐに思いつけていた。     
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