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第一話 神と文字
神様はいないと思っていた。
どの魂で生まれるかによって、幸福しかない人生から不幸でしかない人生まで、全く変わってくるからだ。
だが、なるほど。
人間的思考からして、神様が残忍で愉しむことしか考えていないようであれば、人生なんてそんなものなのだろう。
神様からすれば、所詮人生なんて成り行きで終わらせてしまう、そんな儚いどうでもいいようなものなのだろう。
実際、神様は本当に残忍で無邪気で最悪の存在だった。なぜ分かるかって?
目の前にその神様がいるからだ。
俺が自室でくつろいでいる時、神様は突然目の前に現れた。
どんな姿かと聞かれても、はっきり目に映らないからなんとも言えない。
ただ、目の前のこれは神様だと本能が訴えかけてくる。
未知の存在だから逃げようかと考えたが、その必要が無いと感じたし、たとえ逃げても相手は神様だ、どうせ捕まる。
そう結論付けた俺は、神様にどう接すればいいかわからないため、黙って座り込んでいた。
お互い動かずどれだけの時間が過ぎただろうか。
時計を見る限りたったの1分しか経っていないようだが、もう10分は経った感覚だった。
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