貴方だけの姫になりたい

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ホール中央に立つと、新しく音楽が始まる。アスタの腕の中に入りながら、サラは答えた。 「『アスタの嫁』くらいが関の山でしょうか」 アスタは至極納得したように笑った。 「確かに。それくらいがちょうどいい」 ホールドを組み始めた二人は踊り出す。ウィルバートたちも踊り始めるが、彼はどこか不思議そうな顔で、パートナーであるエミリアに訊ねた。 「どう違うんでしょうか?」 「サラは『王子』と結婚したんじゃなくて、『アスタ』と結婚したと思ってるから」 「なるほど」 ウィルバートが頷く。いたずらっぽく、エミリアは訊ねた。 「ウィルは?どう思ってる?」 ウィルバートは一瞬目を瞬かせたが、当たり前のように答えた。 「俺は、姫と結婚したと思ってますよ?もちろん」 「……そこは『エミリア』と結婚したって言わないと」 エミリアが唇を尖らせれば、ウィルバートは目を細める。 「俺にとっての姫は、貴方だけですから」 エミリアは驚き、彼を見上げる。ウィルバートは優しい笑みを浮かべ、彼女を見つめていた。 「これから先も俺の姫は、エミリアだけです」 エミリアは息を飲んだ。――ずっとずっと、貴方の特別になりたかった。何年も何年も、貴方だけのものになりたかった。 「……ウィルだけの姫?」 「はい」 エミリアは恥ずかしそうに、しかし、嬉しそうに言う。 「それは、最高ね!」 姫は自分だけの騎士に、満面の笑みを見せた。
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