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サラは道場にて、護身術の稽古を受けていた。この1年で、彼女は基本的な花嫁修業を終え、側近として復帰していたが、合間を縫ってさまざまなレッスンをしていた。その中でも護身術は、彼女が希望して稽古してもらっている。もちろん、普段から騎士たちが彼女たちを警護しているが、護身術はあっても困らないだろうという心持からだった。
騎士団長、ウィルバートの指導の下、同じく騎士のラッシュが練習相手をしてくれていた。サラの投げ技に対し、ラッシュが受け身を取る。
「なんか、ラッシュぽんぽん飛び過ぎじゃね?」
その時響いたのんきな声に、皆ぎょっとした。いつの間にやら、王子、アスタが胡坐をかいてサラの稽古を見学していたのだ。彼女はため息をついた。
「王子。今はセオドライト先生の授業の時間だと思いますが」
「バッくれてきた」
アスタは何でもないことのように言う。サラはまたため息をつき、ウィルバートに向き直る。
「すいません。少しお待ちいただけますか?この馬鹿、引っ張っていくんで」
「おいおい。随分な物言いだな?」
アスタがにやりと笑う。サラはじろりと彼を睨んだ。
「毎度毎度抜け出して、いい加減にしてください」
「セオドライトの授業は、微妙に集中力を欠くんだよなー。雑学が多いトーマスの方が面白かったなー」
「文句言わないでください」
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