270人が本棚に入れています
本棚に追加
サラはアスタに近づき、手を差し出した。
「ほら、立って。行きますよ?」
するとアスタはくすりと笑って、彼女の腕を引く。突如抱きしめられ、サラは目を剥いた。
「護身術なんだろ?まだまだ甘いな、サラ?」
彼の囁きにこめかみが引きつる。サラは彼の腕から逃れ、その腕をねじり上げた。
「痛い痛い痛い!」
アスタはたまらずタップし、サラは腕を離した。彼女は彼を見下ろし、微笑んだ。
「そうです。こういう時のために勉強してるんです。あんまり調子に乗ると、こういうことになりますよ?」
アスタのこめかみが引きつった。
「調子乗ってんのはどっちだ?姫様、姫様言われて、自分が偉くなった気でいんのか?」
「生まれた時から王子様の人に、言われたくありませんね」
二人の視線が爆ぜる。無言で睨み合う二人を見て、ウィルバートは思わず隣に控えた、銀縁眼鏡をかけた金髪女性に問う。
「止めなくていいのか?」
「はい。結構です」
彼女は二コラ。24歳。半年ほど前から、サラの側近兼、アスタの側近補佐として働いている。彼女は貴族ではなく、平民の出だ。高倍率の側近採用試験を通過した才女である。
「いつものやり取りですので、問題ありません」
「しかし……」
「ウィルバートさん、もしかして驚いてます?」
ラッシュの問いかけに、ウィルバートは素直に頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!