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「そうだな。側近の時は、彼女は怒ったとしても、喧嘩をするようなことはなかったのにと思って」
「幼馴染の俺からしたら、懐かしい光景ですけどねー」
ラッシュはカラカラと笑い、言い合う二人を眺めた。
「だいたいアスタがわがままを言うんです。すると、優等生のサラが怒る。スクールじゃ、割と当たり前の光景でした」
小さい頃も、変なことでケンカしてたよなー、とラッシュは思い返す。
「王子と姫っていう対等な立場になって、また戻ったんだと思います」
ウィルバートはラッシュの言葉を受け、王子と姫に向き直った。
彼女はあくまで側近、彼は王子としてお互いに接してきた。それが婚約者という関係になり、この1年でプライベートを共有するようになり、互いに遠慮もなくなった。その結果がこれなのか。――少し険悪過ぎないだろうか、とウィルバートは若い二人が心配になる。アスタはサラに指を立てた。
「誰がご主人様か、分からせてやる」
「上等です」
「ラッシュ!」
「はいはい」
アスタの呼びかけに、苦笑しながらラッシュが進み出る。二人が距離を取って対峙したことで、ウィルバートは目を剥いた。――口喧嘩じゃ飽き足らず、本当の喧嘩をする気か?
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