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その台詞にサラは思わず項垂れ、座り込んだ。――この喧嘩自体、作戦のうちか。口からため息がもれる。
「本当に、貴方はこういうことばっかり成長して」
「はははは!他にも成長してんだろうが」
アスタは彼女の目の前に座り直すと、サラの髪を撫でた。
「ごめんって、サラ。ちょっと困らせたかっただけで、ここまで喧嘩する気はなかった」
柔らかく微笑まれて、サラは肩の力が抜けた。確かにくだらないことで言い合っていた。しかしまだ素直になれなくて、彼女は唇を尖らせる。
「私も……多少、言いすぎました」
「多少かよ」
二人ともくすりと笑う。久しぶりに睨み合わないで、互いに視線を合わせた。アスタが言う。
「じゃ『参りました』で、もうおしまい。いいな?」
「はい」
「せーの」
「参りました」
周りの空気が一瞬固まった。……サラの声しかしなかったのである。
「ほら?成長してんだろうが」
目を剥く彼女を余所に、アスタは舌を出した。
「詰めが甘めェんだよ、サラ」
「――――こんの、馬鹿王子いい!!!」
姫の怒号が、大きく響き渡った。
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