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現場には多くの捜査員の中、呆然と立ち尽くす克実の姿もある。
「希実に頼まれたんだ。自分が出頭すれば、絶対に犯人が動くだろうって」
「ははっ……そうか。俺はまんまと嵌められたってわけか」
「どうしてだ? 克実。何の為に、こんな事したんだ……?」
十年前、優等生だった兄が夜な夜な家を出て行く事を知った希実は、ある晩その後を付けた。
学校の裏庭で兄を待っていたのは理科教師の米澤で、二人は恋人同士の様だったと。
そして十年前の四月六日。克実が放火する現場を希実は目撃してしまう。
兄を慕っていた弟は、兄の恋人が男である事も放火犯である事も、誰にも言えなかったのだ。
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