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私を緋毛氈の椅子に座らせて、店の奥から擦りガラスの小瓶に入った日本酒とお猪口、それに貴方のお気に入りの缶ビールを抱えて戻ってきた。
「この為に今日は電車で来たんですから」
薄ピンクのお猪口にお酒を注いでくれて。キンと冷えたビールと冷酒で乾杯をした。
「・・・美味しい・・・」
まろやかでふんわりした喉越し。口の中に花が咲いたみたいだ。私は目を丸くした。
「いい呑みっぷりだなあ。相変わらず」
妻の私が冷酒を飲み干す顔を見てにこにことして言う。
「・・・もう。女の呑み方じゃない とか思ってるんでしょ?」
上目遣いで尋ねると、
「貴女の呑む様を眺めてるだけで、かなり酔えますよ」
と、ちょっと口角を上げて見せ、ビールを傾ける。
ふわっと少し強い風が上がり、桜の花びらが貴方の髪に、私の肩に舞い落ちる。
「美味しいなあ」
「いい呑みっぷりだぁ!」
と私が仕返しすると、貴方は少し目尻を下げて笑う。
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