プロローグ

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 あれから三年か。俺は拘束され、またあの研究をやらされている。  まあ、やっているそぶりをするだけだ。実際は何もしていない。精々しているといえば、ギアの装備を少々改変したドローンの出来を試しているくらいか。  ベッドから体を起こし、眼鏡を掛ける。  大きく体を伸ばし、白衣を着る。  ギアは装甲を展開していないから、恐らくばれてはいないだろう。  いつも通り研究室へと向かう。  ドアを開ける。  異臭がした。 「あ?」  明らかに普通の事態じゃない。錆びた鉄のような匂いだ。  鉄?  待て。可能性は一つ。  ――血か。  だがどうして?  その答えはすぐに出た。 「ごきげんよう」 「――ッ!?」  その声。その見た目は。嘘だ。そんなはずはない。 「オリジン! お前は三年前に破壊されたはずだッ!」  パンドラは一機、ピスケスを除き、水中では身動きが取れない。しかもそれは戦闘能力を持たない。だから無視していたが――いや待て。 「まさか、ピスケスのパーソナリティを!」  パンドラは全部で十六機。黄道十二星座をモチーフとした十二機と、それを監視するための四機。そのすべてがそれぞれパーソナリティというスキルを持つ。  例えばさっきのピスケスは「水中でナノマシンの構造が変形しない」という常時展開されているものもいれば――サジタリオスのように「一定時間圧縮したナノマシンを放つことができる」というものもある。  そしてこいつは――オリジン、つまり原点――その名にふさわしく、「すべてのパーソナリティを使用できる」というとんでもな野郎だ。
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