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そして光が収まったのと同時に、揺れも止まり、少女はゆっくりと目を開き、光が現れた方を向くと…そこには…。
「待たせたな…!もうこの俺が現れたからには安心だゾ!」
元より高身長なエルフの少女だが、そんな少女から見ても…明らかに身長が低い、奇抜な髪の色に身長に合ってないコートを着た…腕組みをした一人の少年が、
輝かしい笑顔をしながらそう少女に言い放った。
「…え、ええと…女神様…この方が…勇敢な異世界の勇者様…ですか?」
『…い、いえ…私にも…さっぱり…』
「なんだ?勇者だって?とんでもないゾ!勇者は俺の大敵!永遠のライバル!俺は勇者では無いゾ!」
「は、はぃ…?」
異世界から勇敢な勇者を呼び出す儀式をしていたのにも関わらず、突如現れたその少年はプンスカと怒りながら自分は勇者では無いと言い出す。
これにはエルフの少女も、女神すら困惑していた。
「あ、あの女神様…これ…転生失敗じゃ…」
『い、いや…失敗もなにも、そもそも…私達はまだ何も“転生”していません…』
「…え?」
『詠唱も途中だったし、私も時空の扉を開けてないのに…その少年は呼び出された…いや、厳密には少年から勝手にこちらへ乗り込んできた…と言いますか』
な、なんだそれは…!女神様ですら儀式をして、ようやく開ける時空の扉を無視して無理矢理乗り込んできただって…!?
この少年は一体…!
『と、とにかく…そこの少年…貴方は一体何者ですか?この時空の女神が監視する時空の扉も無視して現れた少年よ…』
そう女神は姿は現さないが、明らかに怪しむ様子で少年に尋ねると、少年は笑顔で言った。
「俺か?俺は…“征服魔王”…!この混沌に支配されかけた世界の危機を感知して…馳せ参じたゾ!
この征服魔王がやって来たからには…この世界の平和を取り戻す…“平和的な侵略”を約束するゾ!時空の女神とやらよ!」
「ま…」
『魔王…?』
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