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千代ちゃんは週6日、うちに来て、靴を脱いだらすぐに僕に跨ってくる。
「翔ちゃん」
艶っぽい表情で無理やりベッドに連れていかれて、よれたTシャツも色あせたズボンも脱がされる。メガネも外されて、ただのダッチワイフになる。
「今日も元気」
僕の息子を弄んでは、嬉しそうに頬張って、すぐに跨って腰を振り出す。果てるのが早い僕は、彼女の長い睫毛やふっくらとした唇を見ている間に行為は終わる。僕が果てれば、セックスは終わる。
「ふう。シャワー浴びよーっと」
彼女は機嫌がいい。結合部が離れると、千代ちゃんと僕の体液が絡みついた萎えた息子がそこにあった。僕はティッシュで自分のモノを拭いて、服を着て仕事に戻る。何も感じてないフリ。冷静なフリ。…千代ちゃんを好きじゃないフリ。そういう色んな「フリ」で僕は出来上がっている。ボサボサの髪をかきあげて、必死に平静を装った。
千代ちゃんはしばらくしてから裸でタオルを頭にかぶったまま部屋に戻ってきた。彼女は最近ハマっているグループの歌を鼻歌でかなでながら、小さなテーブルに保湿クリームや化粧品が詰め込まれた赤いバニティバックを出した。
僕は、仕事の手を止めて彼女の方を見た。冴えない男の、冴えない部屋に、キラキラとした天使のような女の子がいる。
「今日も、18時?」
「今日はねー、19時。帰りはー、23時くらいかなーごめんね、いっつも遅くて」
透き通るような声に飾らない口調がまた色気を漂わせる。キメが細かくて細くて白い裸は何百回見ても興奮する。彼女は保湿クリームを足に滑らせている。
「翔ちゃん、もう1回したいの?」
千代ちゃんが微笑んだ。僕の息子はまた起き上がって、千代ちゃんに触ってもらうのを待っていた。すぐにそれに気づいて、机に向き直りペンを握って無理やりペン先を走らせた。
「いや、別にそういうわけじゃない。これはなんていうか余韻みたいなもの」
「そっか。確かに、翔ちゃん全然楽しそうじゃないもんね!私が勝手にやってる事だから、なおさらかー」
千代ちゃんは笑いながらそう言って、髪にドライヤーを掛けていた。長い髪には合わない、僕の家に元からある音ばかり大きい、小さなドライヤーだ。彼女は、いつも丁寧に40分もかけて乾かしていた。でも千代ちゃんは1度も文句は言わなかった。
「俺、締切あるから仕事に戻るわ」
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