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一番じゃなくてもいいなんて、どうしてそんな都合のいいことを考えてしまったのだろう。
小説や漫画みたいに、いつか私の方を向いてくれるって、どこかハッピーエンドを信じ込んでいたのかもしれない。
目の前で器用にパスタを食べている千晃を、そっと見つめる。
俯き気味の顔に照明が作った影が出来ていて、長い睫毛が目立っている。
少し地味な人だけど、私には最高にかっこいい人だった。
誰よりもイケメンで、ただ一人、私の心臓のリズムを乱す人。
いつまで経っても、私は千晃の存在や言動にトキメキ、何度だって恋に落ちるのだ。
「奈都、食べないの?」
「食べるよ。ちょっとぼーっとしてた」
「ふうん」
興味を失ったかのように呟いた千晃は、今度はピザに手を伸ばした。
最後なんだから、楽しまなきゃ。
ずっとずっと忘れないように。
今日この時を、千晃にも覚えていてもらえるように。
私は楽しそうに、いつも通りしていなくちゃいけない。
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