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絶対に覚えておきたい映画なのに、苦しさと悲しさが押し寄せる度、私はぎゅっと目を瞑り、隣の千晃に気付かれないように、何度も深呼吸をして、映画の時間をやり過ごした。
*
なんとか泣くのを堪えて、映画を観終わり、二人で駅へと歩く。
「ねぇ、千晃」
「ん?」
「今日、千晃の部屋に泊まってもいい?」
「いいよ」
また軽い返事だ。でも、今はそれが有難い。
本当なら、泊まるべきじゃないかもしれない。
絵里さんを裏切るような、千晃に後ろめたさを持たせるような、こんな行動は慎むべきかもしれない。
でも、これで最後にするから。
だから、明日までの千晃の時間をお別れの餞別としてもらうことを許してください。
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