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千晃のアパートは学生時代から変わらない。
少し古くて、あまり広くもないのだけど、不思議と居心地が良かった。
でも、家事をほとんどしない千晃がうちに来ることの方が多くて、こうして私がお願いした時だけ、千晃の家にお邪魔するのが常だった。
決して家に上がるのを嫌がる訳ではないから、隠し事があるとは思っていなかったけど、もしかしたら私の家によく来るように、絵里さんの家に行くことが多いのかもしれない。
「どうぞ」
「お邪魔します。相変わらずだね」
汚い訳ではないけど、物が散乱している部屋の中を見て、思わず苦笑してしまう。
ずっと変わらない千晃らしさを見てホッとしながらも、私と別れて絵里さんと付き合うようになっても、変わらない部分なのだろうか、と思うと、胸が締め付けられ、顔を顰めてしまった。
「ごめんね。掃除する?」
「ううん。座るところがあればいいよ」
少しだけ申し訳なさそうに眉を下げた千晃に笑顔を見せて、手早く物を片付けた。
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