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『好きです。付き合ってください』
『いいよ』
大学二年の春。
大学のシンボルとも言える桜の木の下で、サークルの同級生である、坂下千晃に告白した。
堂々とした枝に咲き誇る薄桃色の花弁が、この季節だけは、誰よりも何よりも主役であると強く主張している。
散ってしまえば、他の木々と変わらない存在になるのに、あの可愛い花を咲かせている時だけは、他とは違うのだ、日本に生まれて良かっただろう、と訴えてくる。
そんな桜の木の下で、入学してからずっと片想いをしてきた人に想いを告げることを、私は選んだ。
主役にはなれない自分でも、綺麗な花の下なら、少しは見てもらえるのではないかという期待。
それと同時に、桜にはなれないという確信。
この告白は失敗するだろうと思っていた。
ただ想いを伝えるだけで充分だ、と。
そう思って言った言葉は予想に反して受け入れられ、あっさりと友達から恋人へと変わったのだ。
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