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「もう少しで咲きそうね」
オフィスビルから近くのカフェへと向かう道の途中に小さな川があり、その川沿いに桜の木が並んでいる。
そこを通りかかった時に呟いたのは、同僚の平木祐子だ。
確かに蕾が膨らんできていて、暖かい日が続けば、あっという間に満開となりそうである。
「そうだね」
「就職して一年か。なんか無我夢中だったな」
「うん」
千晃とは大きな喧嘩もなく、大学時代を過ごし、それぞれ別の会社へ就職してからも、それなりに仲良くやってきた。
週末にはデートをするし、時々私の部屋に泊まっていくこともある。
だけど、私は知っている。
千晃にはずっと想う人がいることを。
私ではないその人に、ずっと片想いをしているのだ。
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