本編

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千晃はサークル内では、それほど目立つ方ではなかった。 物静かで、あまり騒いだりはしない。 でも、輪の中に溶け込み、いないと探される。そこにいるのが当たり前だという認識を周囲に持たせる。 存在感がないようで、存在感のある不思議な人だった。 最初は、そんな不思議な男の子が気になっただけだった。 大きな口を開けて笑うわけでもないし、冗談を言って笑いを誘うわけでもない。 でも、ある時、静かにクスッと笑った顔が、意外と可愛いことに気付いた瞬間、私は恋に落ちていた。 それからは、自然と目で追うようになり、勇気を出して、話しかけるようにしたし、少しでも近くにいられるように行動した。 だから、気付いてしまったのだ。 ふとした時に、千晃の視線の先には絵里さんがいることを。
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