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重い体を抱き留め、気を失った彼の唇に最後のキスをした。
突然、始まってしまった「終わり」に、私もまた、かなり戸惑っている。
だけど、自分が死ぬ以上に
今はあなたが死ぬことが一番、怖い。
あなたが生きていてさえくれたら、いつか。
あなたの隣で眠ることが許される気がするから―――。
「ごめんね。智樹。私、行かなくちゃ……」
愛しい人の体をそっと横に転がして、私は赤い光線の標的となる道を選択した。今の私なら、生まれ変わっても愛する人を忘れない、気がする。
胸の真ん中に赤い点が這い上がってきた。
「なにやってんだ!おまえ!!」
鈴木のビビりまくった声が響いた。
敵は撃ってこない。
私は両手を上げて、降参のポーズを送る。
死を覚悟すると、怖いものがなくなってしまうようだ。
「鈴木浩一郎。
あんたの話を最後まで聞けなかったけど、言わんとしたことは大体察してる。それを踏まえて頼みがあるんだけど、引き受けてくれると約束してくれるなら、今目の前の脅威を私が全て引き受ける」
「……なんだ、それは」
「そこの彼。私の恋人なんだ。
彼を巻き込んでしまったことを猛烈に後悔してる。
私が敵を引き付けている間に、彼を連れて逃げて欲しい」
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