第2章 封印を解け

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 わずかな時間だったのだろう。  不快感は消え、階段の途中でしゃがみ込む私に通りすがりの看護師さんが声を掛けてきた。白昼夢なんて初めてだった。「だ、大丈夫です!」と私は立ち上がり、階段を上り始めた。十階のさらに上の、屋上へと続く階段を上りドアを開けると秋晴れの爽快な青空が輝いていた。薄暗いところからの光の洪水に目が眩み、風を感じながら新鮮な酸素を吸うと、ドアから真っすぐのところに見慣れた背中が今にも倒れそうにのけ反った。  咄嗟にしがみつくと、智樹は呻くように泣いていた。彼の心の叫びが聞こえた気がした。
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