第3章 パンドラの箱

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「ところで話は変わるけど、昨日の夕方また例の遺体が発見されたらしいわ」 「どこで?」 「夕張市の廃墟の中」 「二人か?」 「三人よ」  年に三度は不可解な遺体が発見されるようになってから、もう十六年にもなるのに、この一連の事件の捜査はずっと座礁の乗り上げていた。被害者は首と内臓をごっそりと取られ、血の一滴までも綺麗に抜かれていて、両手を空っぽになった胸骨の上で組まれていた。時には花を持たされたり、帽子を重ねられたりしていた。死者への礼儀と敬意さえ感じられる。だが、猟奇殺人には違いなかった。そして必ず二つから三つの遺体が仲良く並んでいる状態で発見される。生前の二人には関係性があったりなかったりしていて、年齢も性別も職業もバラバラ。人里同士をつなぐ無人エリアの途中で行方不明になることが多く、宇宙人に誘拐されたと騒ぐ奴も当然いた。  俺はこの不可解な事件に因縁がある。警察官になってすぐに経験したのが、この異様な死体遺棄事件だったのだ。  「どうだった?」 「前回と同様の状態だったらしいわ」 「変わったことは?」 「まだ調べてるから、なんとも言えないわね。廃墟は立ち入り禁止だけどマニアやオカルトファンが探検する場所になってて、大量のDNAが採取できちゃって逆に絞り込めないみたい。野良猫も多いから、遺体発見時は結構荒れていたみたいだし」 「犯人はそれが狙いかな?」
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