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「かもね。前回も廃病院だったし、その前は林道脇の小屋の中や、潰れたドライブインの屋内だった。遺体を雨風が当たらない場所に必ず放置してる。でも遺体を運ぶには適さない場所だった。出入口は人ひとりやっと通れるかどうかだったりで…」
「切り口は?」
「同じよ。刃物よりも鋭くメスよりも目が粗いものでスパッと綺麗に首を切断している」
俺はいくつかの遺体をこの目で見たことがあるせいで、わりとはっきりと想像できた。
「どうしてニュースにならないのかって、遺族からのクレーム処理が大変なのよ。顔がないと個人を特定するのもかなり大変なのに、せっかく遺族のもとに帰せても納得いかないと食い下がられたんじゃ堪らないわ」
「……どんな事件でも被害者側に立てば、納得なんてできねぇ」
俺は煙草に火をつけて遠くに煙を吐き出した。
「今回もめぼしい証拠が出なければ、未解決事件に直行よ。新聞にも報道にも載らないまま葬られてしまう」
もしも、今回の三人の被害者が一連の事件との関連性を立証されると、十六年間で百六十五人の被害者というあり得ない数字になってくる。警察も政府も地元市民の安全のため混乱を避ける理由でずっと伏せている事件だ。警察内部でも詳細を知る者はごく最小限にされ、触れてはいけないパンドラの箱に納められている。
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