第3章 パンドラの箱

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 本州から独立した行政機関である北海道警察は北海道公安委員会の下部に位置しており、広大な土地を警邏するため方面本部に区分け管理され、公安委員会も地方本部を設けられた。極悪専用の刑務所があったりしたことで、重大犯罪を犯した危険人物を収容していた過去の歴史の影響かは不明だが、本州では例を見ないよう異様極まなりない事件が開拓の歴史の中で何度か勃発し鎮静化されてきた。日本であって日本ではない、それが北海道という特殊な環境なのだ。 「そういえばさ。ふと思い出したんだけど、道央自動車道の札幌旭川区間で何年か前少女の遺体が発見されたことがあったでしょう?」 「それは七年前だな。勿論覚えてるさ。あれの後、亜沙美が行方不明になったんだから…」  別れた妻が近所のスーパーに買い出しに出掛けたまま行方不明になった。大量死体遺棄事件の関連は定かではないが、日常の中でいるはずの人物が突然消えるという不可解な事件が頻発した時期に、まさか自分にとっての関係者が被害に遭うなんて思ってもみなかった。彼女は再婚し小学生に上がったばかりの息子がいて、学校教師をする気の優しそうな旦那と幸せに暮らしている筈だった。 「まぁまぁ…。亜沙美さんの件は置いといて。私が言いたいのはさ、消えた少女の遺体の謎の方よ。法医学部の遺体安置冷蔵庫から一人消えたやつ、覚えてるわよね?」 「そういや、そんな奇妙な事件があったな…」  あの時は遺体が歩き出したとか、少女遺体マニアの学生が持ち逃げしたとか、散々思いつく限りの可能性を調べつくしても結局未解決になったものだ。当時はまだ防犯カメラなんてそこら中にあるわけじゃないから、目撃者捜しも大変だった。
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