第3章 パンドラの箱

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「あの時の検視報告書、見たのよ。そしたらさ、消えた少女の遺体にあなたの娘と同じ特徴があったってわけ」  「なんだと?」  俺は眉毛を釣り上げて驚いた。  「これ、コピーよ。本来持ち出し禁止のやつだから、責任もって破棄してよね」  佳純はそう言うと、折りたたんだA4の白い紙を俺の前で広げた。折り目の線がついてしまっているが、引き伸ばした遺体写真と司法解剖記録だ。 「髪、眼球の色、爪、歯形、色々あるわ。一度、専門医に連れて行って照会した方が良いんじゃない?」  俺は頭を鈍器で殴られるほどの衝撃を感じた。 「あぁん? なんでそうなるんだ? 死体が生き返ったとでも言いたいのか?」 「そうね。死体が生き返ったとしか言いようがないけどさ。私は常識を疑って何事もまっさらな目で見るって決めてるの。その目で見て、この件とあなたの件が繋がったのよ。  驚いたわよ? もちろん、私だって物凄く驚いた。  でも、確かめてみる必要はあるんじゃない?  消えた死体は発見当時、上半身と下半身が完全に切断されていたわ。引き裂かれたような断裂部の写真も残ってて、内臓は一部消失していた。野生動物が食べちゃったのかもしれないけど、それにしてもグロテスクなのに綺麗な印象の遺体だったのよね。体の表面的にはまるでまだ生きているみたいに……。  あみちゃんだっけ? 記憶喪失で、推定年齢十七歳で、これだけの特徴が一致してるのよ。DNAで同一人物かどうかチェックしてみることもできるわ。まだサンプルは保存されているんだから」 「馬鹿々々しい」と、俺は書類を折りたたんで胸ポケットの閉まった。 「そう言うと思った」 「じゃあ、なんでわかっててこんな事を? 俺を試したのか?」  むきになった俺を見て、くすりと微笑んだ佳純は頬杖を付いて俺を横目で見詰めてきた。まだ昼前なのに誘うような女の眼だ。 「そんな意地悪な言い方しないでくれる? 別に他意はないわよ」  佳純はまたしても俺の掌の上に手を乗せてきて、ギュッと握りしめた。 「でも、可能性は零ではないでしょ? その寝顔と今夜本人の寝顔比較してみれば良いのよ。似て無かったら破棄して。ちゃんとシュレッターでよ?」  その時、丁度佳純の携帯が鳴り出して彼女は仕事に駆り出されて行った。刑事は忙しい。
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