第3章 パンドラの箱

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 運転席で見悶える若い男の顔をズームして連射する。女の姿がないだけマシか。しばらくして、助手席に姿を見せた女の髪は乱れていた。商売女なのか、口紅がやたらと赤く、服装が年齢の割に若作りし過ぎている気がする。鍛えられた体のようだが、顔はやつれた奥さんと同じ年代のようだ。女は車から降りると、服装を正してパチンコ屋の中に戻って行った。ギャンブル依存症の女を買ったといったところだろうか。  これは浮気に入るのだろうか?  それを判断するのは依頼人だけだ。  それから、男はしばらく夢心地と言った顔をしてうたたねしていた。突然飛び起きて、腕時計をいじると車を発進させて立体駐車場から出ていく。田舎のパチンコ屋の立体駐車場の出入りは知れていた。この場所は平日昼間の死角と言ったところか。  その後、夫は真面目に仕事周りをして、午後六時半に自分の車に乗って会社を出た。後を着けていくと、居酒屋の駐車場に車を入れてまたしばらく降るもせずにじっとしていた。二十分後に昼間見た女がコンビニの袋を手に持って歩いて来た。女を車に乗せた男は札幌市内までドライブをすると、三時間四千九百円のラブホテルに入って行った。フロントにセットしておいたカメラで撮影し、出てくるところまで待機する。あみにメールを送り、特に問題はないと返事を貰って、あとはシャッターチャンスを逃すまいと只管ホテルの出入り口付近に集中した。対向車線側の側道に路駐して、運転席の窓のカメラを咄嗟に構えるために、他の出入りしする車両とカップルをに焦点を当てていると、まだ一時間半なのに対象者の相手の女が徒歩で出てきた。青白い顔で、頼りない足取りだが急ぐように去っていく。連続撮影をして見送ろうか考えたが、嫌な予感が的中するとしたらあの女の素性を知っておく必要があるため、俺は車を動かした。女はタクシーを捕まえて乗り込んでくれたから丁度いい。ベッドタウンに引き返し、到着したのは依頼主の自宅の目と鼻の先の一軒家だった。
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