第3章 パンドラの箱

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 なんで、消えたとは言え検死解剖まで終えた遺体の顔を照合しなくちゃいけなんだ? わざわざそんな地雷踏まなくたって良いじゃないか? 例え百歩譲ってあみが消えた少女の遺体だというなら、俺はなにをどうしなくてはいけなくなるのかさえわからないのに。だって、あみは生きている。今、ここでこうして俺と目と目を合わせて、喋って笑って見つめ合っている。  それが大事だ。それ以外は今は要らない。 「なんか、急に年頃の女の子らしくなったっていうか」 「……どういう意味?」 「出会った時、お前きったねぇ野良猫みたいだったけど、今は見違えてすっかり年頃の可愛い女の子じゃないか」  俺の言葉に、あみは突然真っ赤になった。  そんな顔を始めて見る。どうやら、俺の言葉に過剰反応したようだ。 「け、啓介こそ!そんなすかした顔して殺し文句言うなんて、変態!!」  面白い反応が返ってきた。俺は堪らなくなってニヤニヤと笑っていた。 「可愛い娘に可愛いって言って変態かよ!極端だなぁ、ははははは」 「その笑い方!汚いから、下品だから、耳障りだから!」  なぜかそれだけのことで、俺は腹がよじれるぐらい大笑いした。 「誤解しないでくれ。俺は本当の娘だと思ってるんだよ。だから、変態って心配しなくても……」 「そんなこと心配なんかしてない!」と、あみは俺の言葉を遮った。  そして、  突然テーブルの淵をすごい速さで移動してくると、俺の膝の上に尻を乗せてきて首に腕を回し、力強く抱き寄せられた。ぴったりとくっついた抱擁に、あみのなにもなかったはずの胸が俺の胸骨に当たっているのがわかる。 「啓介って本当に鈍いよな」
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