第4章 考えるより感じろ

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 好奇の視線なら気にならない。だけど、性的な目で興味津々に舐めまわすように視る奴らを殴り倒したい衝動をグッと我慢する。視線だけで羞恥と屈辱感を与えてくるとは、こいつらどんだけ飢えてるんだ?  むき出しの欲望がそのまま瞳の色に現れていることに自覚がないのだろう。これが思春期の青年という生き物なのだ。私が属する世代は、危うくて脆くて艶めかしい。 男子も女子も、なるほど。肉食系と草食系と呼ぶ風潮通りに、恐竜時代のカテゴリーをそのまま導入できそうな程に単純明快。弱肉強食の構図もうっすらと視えるような気がする。とりわけ一番後ろ、ドアに最も近い席で王様気取りの座る図体のでかい男が、この教室の中での王者なのだろうか。あれはダミーで、影の支配者がいる可能性もありそうだが。  女子の中で最も警戒心むき出しで、直視しないがさっきから執拗な観察をする女がいた。私を敵か味方か吟味しているといったところか。  教師に促され教科書通りの挨拶をすると、ざわついた。私の声が問題らしい。  面白くなさそうに不貞腐れる女子が、好戦的な眼差しを向けてくる。窓際の席をあてがわれた私は、注意深く机の間の通路を歩いた。
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