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それは山中にポツリとある古い民家だった。「 まあ茶でも飲んでけ 」老婆の言葉に甘え畑になっている庭から縁側に腰を下ろした、こちらの問いかけには答えずにぶっきらぼうにお茶を出す、どう見ても他に人の気配は無い「 茶を飲んだら日が暮れる前に帰れ 」そう言うと家の奥へ引っ込んでしまった。私達は言葉通り帰路についた。
翌日、市役所の福祉課に足を運んだ。楼火シズ 彼女の名前だった。市の職員の話ではあの場所には誰も住んでないとなっていた、町役場の担当者が以前何度か足を運んだが人は誰も居なかったらしい、いいかげんなものだ電気や水道が使用されているのに人が居ないはずがない、メーターの検針も来てるし郵便だって届いてる、それはいつの話だと問いただすとウチの担当じゃないからよくわからないと言う、とにかく早急に対応するとの事だったので引き下がる事にした、こちらが出版社の人間だと知らせるとあからさまに態度が変わった。
それから職員が頻発に足を運んでいるらしいのだが本人が一切受け付け無いと連絡があった。
「 ばあさん 今はいいが冬はどうしてる この辺は雪が積もるだろう 下まで降りれなくなったら食べるもの手に入らないだろう 」
「 その時は木の皮でも齧っとくさ 山暮らしを舐めるな 」
「 木の皮なんて齧ってたら本当の山姥になっちゃうよ 」
「 こんにちはロウカさん おやお客さんですか 」
突然の声に目を遣ると制服らしいものを着た男性がいた。
「 わたくし町役場の福祉部の○○です 」
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