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あ、両親だけじゃない。家族、だ。
兄さんが僕と同じ歳で荒行をこなし、しかもそれは自主参加だったと聞いた時には絶句した。
僕がまだ子供なのに荒行に放り込まれたのは多分に兄さんのせいだ。
兄さんは『高峯』の中でも屈指の『霊力』の高さを誇る。本家をも凌ぐ程に。
そもそも両親からして霊能力者なんだ。『高峯』本家の三女にして『姫巫女』だった母さんと、分家でありながら本家に並ぶ霊力を持つ『先祖返り』と呼ばれる程の父さん。そのハイブリッドが兄さんなんだ。
そんな規格外の人達を基準にしないでほしい。
僕はただ、人には見えないモノが見えて、聞こえないモノが聞こえる、わかってしまう。ただそれだけなんだからさ。
それだって分家ならそんなモノ。中には霊力が無い人達だっている。それでも僕はこの家では『落ちこぼれ』なんだ。
家族は「京は『力』を怖がって自分で自分に枷を嵌めてるだけ」って言うけどさ。僕はこんな『力』なんか欲しくなかったよ。そりゃたまには役に立つ事も無くはないけどさ。
年に一度あるか無いかくらいの事だけど、何か不思議な力が働く事がある。テストのヤマが当たったりとか、LOTOが当たったりとか。頭の中に数字や言葉が浮かぶんだ。本当に些細なレベルだけどね。僕は『天啓』なんて呼んでる。
けどホントそれだけ。父さんや兄さんみたいに霊を祓ったり、瘴気を浄化したりなんて出来ない。すごく、すごく中途半端。
『高峯』は白狼を祀って、眷属の狗を自分の式神として使役する。それだって僕は一匹がやっと。それもかなり格下の『百郎坊』。僕は『百』って呼んでる。その一匹だけ。本家レベルなら『十一郎坊』から『二十郎坊』までの強力な眷属を従えられる。父さんも母さんも。兄さんに至っては『五郎坊』まで使役出来るんだ。でも、僕は百。
こんな中途半端な『力』なら、いっそ無かった方が楽だったよ。
……百は可愛いけどさ。
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