僕の事

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 まぁそんな不憫な僕なんだけど。  『修行』の成果なのか、変なモノから自分の身を守れるくらいには霊に動じなくなった。  とはいえ、やっぱり見た時は一瞬ギョッとするけど。  踏切や駅のホーム、病院、オフィスビル。  そこかしこに、いわゆる『幽霊』がいる。  しかも今言った場所の『幽霊』は病院以外は見た目からしてヤバい。  まぁ前者は言わなくてもわかるよね。完全スプラッタ。  じゃあ後者はって言うと、これはだいたい二つに別れる。  ぶっちゃけ首吊りか身投げか。  首吊りならホラーだし身投げならスプラッタ。  そんなのをいちいち見てたらさすがに動じない訳無い。しかも彼らは無念と未練で悪霊化して道連れを作ろうとする。  『魔のカーブ』とか言われるタイプのアレ。  普段は何も無いけど、道端に供えられた花束なんかを見たら「あぁ、事故があったのか」って考えるでしょ? 一瞬でも死んだ奴の事を考えるでしょ?  そうやって心を寄せると波長が合いやすくなるんだ。  特に落ち込んでる人とか、生前の彼らと似た様な経験してる奴とかはかなり。  んで、波長が合っちゃうとヤバい。彼らの未練とか死ぬ間際の気持ちに引き摺られる。要は死にたくなっちゃう。  んで、無意識にガードレールに寄ってったり、踏切に入ったり、入ってくる電車の前に飛び込んだり。  見事、道連れの出来上がり。  けど、道連れが出来た所で上がれもしないし動けもしない。  無念は増し、新しい道連れが更に道連れを作ろうとする。  最悪の悪循環だ。  そんなの、相手にしてたら神経が持たない。命がいくつあっても足りない。  だから『何も見ない、何も返さない』。  絶対に引き摺られない様に自分にバリアを張る。  あとはまぁ、ウチの『大神さん』のご利益、お守りと眷属の狗っていう僕らだけに使える裏技を使う。  敷地内から出ると、いつの間にか一匹二匹、狗が足元についてくる。  おかげでヤバいのは近付いてこない。  ただ、害意の無い、例えば水子なんかは狗でも弾けないらしい。  父さんや兄さんなら除霊・浄霊は出来るけど僕にはまだその『力』は無い。  無いと言うか、その『修行』が嫌で逃げてるって言った方が正しいかな。  取り憑かれるのは御免だけど、その為にわざわざ悪霊とご対面するのも御免だから何だかんだ言い訳して『修行』から逃げてる。  いや、逃げるでしょ、そりゃ。
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