2  連れてきてしまった

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 カオの頭上に、留め置くための新しい紐をプレゼントする。 「仕事が終わったら、相手してくれる?」  紐付きのカオを引きずりながら、リビングに行く。紐をテレビ前の天井に固定する。 「今のが仕上がったらな」  これでしばらくは邪魔しに来られないはずだ。 「昼過ぎ? 夕方には終わる?」 「昨日、徹夜で描くつもりでいたんだ。それができなかった。仕上がるまでムリだ」  テレビをつける。子ども向けのアニメをやっていた。カオがおとなしく見始めた。  その姿。  メイクが濃いだけで、ひょっとしたら高校生。もしや、ひねた中坊か。探りたくなる。  いや、まずは納期優先。人間らしく生きていくためには誠実に仕事をこなさねばなるまい。  作業机に向かう。  単純作業に入ると、いつものように雑念が沸々と湧く。  人間らしく生きようとするのは、自分が人間外の存在だと自覚しているからだ。純粋な人間であれば、自分を微塵も疑わない。自分は人間であると改めて、認識し直したりしない。人間らしく生きようなどと、頑張らなくても生きていける。  であれば人間らしく生きたいと他者に宣言したリ、しようと思ってしまう者は、本人の自覚がなくても俺たち同様、人間のシンを奪い、外身を乗っ取った輩と推察できる。  幼い体を奪い、外身に侵食されて。  うっかり、忘れてしまったのだ。  病の急変。突発的事故。  その場に同族が居合わせた場合。  本人を交えた乗り替え用人間の、事前の身辺調査もできずに、乗り替えが強行されるときがある。  自分は人間だと信じ切っている者は、そういった緊急乗り替えを、幼い体にされた場合が多いようだ。  乗り替えの体が幼少か。青年か。大人か。  俺たちが持つ記憶が即座に外身を制圧できるか。外身に呑み込まれてしばらく一族の自覚を失ってしまうか。  それに因って、覚醒できる時差が生じる。  それは仕方のないことだ。  ほとんどの乗り替え時、残りわずかとなった外身の命を察して、一族の者に代わりの体の確保を願い出る。その連絡が津々浦々へと行き渡る。仲間の誰かがどこかからか、手頃な人間を調達してくる。  選ばれし人間の中身、シンを引き抜く。  傷んだ体と健康な体を差し替える。  乗っ取った人間の性格が、以前とはどことなく違ってくる。生来とは異なる雰囲気が漂ってしまう。
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