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カオの頭上に、留め置くための新しい紐をプレゼントする。
「仕事が終わったら、相手してくれる?」
紐付きのカオを引きずりながら、リビングに行く。紐をテレビ前の天井に固定する。
「今のが仕上がったらな」
これでしばらくは邪魔しに来られないはずだ。
「昼過ぎ? 夕方には終わる?」
「昨日、徹夜で描くつもりでいたんだ。それができなかった。仕上がるまでムリだ」
テレビをつける。子ども向けのアニメをやっていた。カオがおとなしく見始めた。
その姿。
メイクが濃いだけで、ひょっとしたら高校生。もしや、ひねた中坊か。探りたくなる。
いや、まずは納期優先。人間らしく生きていくためには誠実に仕事をこなさねばなるまい。
作業机に向かう。
単純作業に入ると、いつものように雑念が沸々と湧く。
人間らしく生きようとするのは、自分が人間外の存在だと自覚しているからだ。純粋な人間であれば、自分を微塵も疑わない。自分は人間であると改めて、認識し直したりしない。人間らしく生きようなどと、頑張らなくても生きていける。
であれば人間らしく生きたいと他者に宣言したリ、しようと思ってしまう者は、本人の自覚がなくても俺たち同様、人間のシンを奪い、外身を乗っ取った輩と推察できる。
幼い体を奪い、外身に侵食されて。
うっかり、忘れてしまったのだ。
病の急変。突発的事故。
その場に同族が居合わせた場合。
本人を交えた乗り替え用人間の、事前の身辺調査もできずに、乗り替えが強行されるときがある。
自分は人間だと信じ切っている者は、そういった緊急乗り替えを、幼い体にされた場合が多いようだ。
乗り替えの体が幼少か。青年か。大人か。
俺たちが持つ記憶が即座に外身を制圧できるか。外身に呑み込まれてしばらく一族の自覚を失ってしまうか。
それに因って、覚醒できる時差が生じる。
それは仕方のないことだ。
ほとんどの乗り替え時、残りわずかとなった外身の命を察して、一族の者に代わりの体の確保を願い出る。その連絡が津々浦々へと行き渡る。仲間の誰かがどこかからか、手頃な人間を調達してくる。
選ばれし人間の中身、シンを引き抜く。
傷んだ体と健康な体を差し替える。
乗っ取った人間の性格が、以前とはどことなく違ってくる。生来とは異なる雰囲気が漂ってしまう。
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