2  連れてきてしまった

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 俺は外身から抜け出て行動することが、結構ある。それなのに無用心にも、カオを招き入れてしまった。  中身の抜けた、俺の所有物となっている俺の外身を、カオにいたずらされないように。  カオを残しての外出は極力避けなくてはいけない。カオが部屋に乱入してこないように、通常よりも気も引き締めて過ごす必要が生じた。    自業自得だが、厄介なことだ。  思わず、眉間にシワを寄せた。  寝ている俺の外身の頭のてっぺんと、動き回ってきた意識体の俺の頭のてっぺんとは、赤い紐で繋がっている。  この状態。俺の外身と中身。  可愛く表現するなら、サクランボ。  俺の名誉のために言っておくが、俺はチェリーボーイではない。それだけは間違えないでもらいたい。  ……誰に弁明しているのだ、俺は。  シン管理部屋のほうをつい、見遣る。  うん。俺はしっかり気にしている。  はっ。笑いのような溜め息を吐く。  まあいい。  とにかく、この姿。  赤い紐は、長老が話していた通り、お腹の中の赤ちゃんと母親とを繋げているヘソの緒そのものだ。ベッドに横たわる俺の外身は、赤ちゃんのように、無防備でいる。  俺たちの見た目は操り人形。  またはキーホルダー人間である。  それを指摘し合い、大笑いしたのはいつ、誰とだっただろう。昔の出来事すぎて、容易には思い出せない。  ぐだぐだ思いながら。  さて、外身を纏いますか。  俺は頭に付いている紐を二つに分ける。  一本はそのまま。もう一本は体の中心を縦に裂くように、下へと向かわせる。利き足である左足に紐を通していく。親指のつま先から紐を出す。伸ばしておく。  外身の頭のてっぺんに、中身のつま先から伸ばした紐をくっつける。そうしておいて、俺は自分の頭上を、くるくる撫で回す。  頭のてっぺんに付いている紐を伸ばす。  伸ばした紐を、天井目がけて投げる。  天蓋付きベッドの四隅に出っ張っている棒の一つに、紐が引っかかったことを確認したのち、意識体である俺自身を天井向けて、引っ張り上げていく。  意識の集合体である中身やシンに、重量はない。空気より軽くも重くもない。  引っ張り上げるというのは、言葉のあやだ。動作を表現しているだけにすぎない。そこにちからは一切、介在していない。
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