1 見つけてしまった

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 そうすれば警察が来て、捜査が始まる。  ニュースになれば家出人や行方不明者と照会され、どこの誰だかわかる。  うっかり見つけてもらい損ねたら。  今年中に見つけてもらえなければ。  除夜の鐘の音とともに紐を切る。  新たな歳へ、不明瞭なモノは持ち越せない。紐を切られた頭だけ女子は鐘の音とともにこの山に舞い戻る。辺りを彷徨うことになる。心霊スポットのできあがりだ。 「俺んちに居る間、おまえのことをアタマオンナって呼ぶからな」 「えーっ、それ、やだ。メメ。ミミ。ハナ。デコ。……ポッペとか」 「それ全部、おまえが今見てる、おまえのパーツじゃないか。呼んで欲しい名前はないのか」  いつでも切り捨てられる立場の俺は、鷹揚に構える。苦笑する。 「だったら、わたしの名前はカオがいいかな」  よろしくね。  カオが笑う。  刹那。握っている紐が。  俺の手にべったりと癒着した。  しまった。取り憑かれた。  カオが本名のようだ。  俺とカオの縁がつながってしまった。  出会った直後からわかっていた気もする。  紐をつなげたときに観念していた気がする。  闇が薄まってきた。  本来の目的だった男の捜索は一旦打ち切ろう。  俺は自分に付いている紐を足先から頭のてっぺんに移動させる。  くいっ、くいっと紐を引っ張る。  すうっと上昇していく。  感覚で言えば、未確認飛行物体乗車中。  山々と田畑が鈍色に染まってきた。 「うわあっ。楽しい」  紐にぶら下がっているカオが歓声を上げる。遊覧飛行と間違えている。余裕で訊いてくる。 「で、お兄さんの名前は?」 「キジローだ」 「本名? あだ名?」 「そんなことより。スピード、上げるぞ」     ひゃあああああぁ。  俺のひざ辺りでカオが悲鳴を上げた。  
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