第1章

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 何だか言いがかりのような気もしたが、でもそれでどうするのだろうかと気になった。自慢じゃないが彼女なぞ大学の時に振られて以来、全く出来る気配も無かった。会社に入っても出世とは縁がなく、未だに平社員だし嫁さんもいない。そんな自分に誰か世話してくれるのだろうか? もしそうなら恭一郎はこの侘しい一人暮らしに決着を着けることが出来るなら自分にとっても素晴らしいことだと思った。 「死神さん。でも僕、彼女いない歴二十三年なんですよ。そんな僕に誰かいますでしょうか? モテない事にかけては自信があるんです。上司が世話してくれたお見合いも連続五十回振られましてね。未だに独身なんです」  恭一郎の言葉を最後まで聞いた死神は 「あのな、俺だって仕事なんだ。それに飯の種だから、ヘマはしない。今回お前に丁度良い相応しい娘が見つかったから現れたと言うものだ」  そうか、死神は成功確実な所にしかやって来ないと言う訳かと恭一郎は思い 「あの、どんな娘なんですか、僕に釣り合う娘というとやはり歳なんかは四十過ぎの熟女かなんかですかねえ?」  自分のことにかけては全く自信が無い恭一郎だから、ついこんな事も言ってしまう。 「馬鹿! 四十過ぎなら子供を作れないだろう! お前だってあと五年も過ぎれば種が薄くなって子供を作りたくても出来難くなるんだぞ」  そんな仕組みになってるとは思わなかった。のんびりと暮らして来たが、タイムリミットはあと五年なのかと思った。 「判ったか! お前に紹介するのはこの娘だ」  死神は懐からタブレットを取り出すと指で操作して画像を表示させて恭一郎の前に見せた。 「今どきの死神さんは便利なもの持っていますね。僕もスマホなら持ってますがタブレットは持ってないです。あれ、これiPadじゃないですか、それも最新の!」  驚いて覗き込む恭一郎に死神は 「最近はな、色々と地獄庁が煩くてな。それにあの男、スティーブ・ジョブズがやって来て地獄の機械を全部リンゴマークに変えよった。それから支給されるのはこればかりよ。そんな事より、どうだ、この娘は」  死神の手にあるiPadに写された画像は、着物を着ていて日本髪の娘だったが、かなりの美人でカワイイ娘だった。踊りか何かの時に写したのだろうか? 写真の後ろの景色も見慣れない光景だった。
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