第1章

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「この娘なあ、実は九州の佐賀の出身でな、事情があって今は東京に暮らしているのだが、いざ結婚となると、もしかしたら向こうに住むかも知れんのだ。それはどうかな?」  そんな事は構わなかった。東京生まれの恭一郎だが、別に結婚してどこで暮らしても構わないと思った。会社も、佐賀には支社があり希望すれば転任させてくれる社風だったからだ。 「いいですよ! この写真見るだけではちょっと古風ですが、この娘幾つなんですか?」  恭一郎の問に死神はやや間を置いて 「幾つぐらいに見える?」  逆に質問して来た 「そうですね~二十三か二十二ぐらいですかね?」 「惜しいな。聞いて驚くなよ。十八だ!」  十八にしては老けていると思ったが、こういう娘の方がいつまでも変わらない感じで四十を過ぎても全く老けないと思う恭一郎だった。 「どうだ、逢って見たいか? ならばここに連れて来てやってもいいぞ」 「今からですか?」 「ああ、嫌か?」 「いいえ、出来れば今直ぐにでも。善は急げって言うじゃないですか」 「これは善なのか? 死神の俺がか?」 「何でもいいじゃないですか。これで上手く行って結婚して子供が沢山出来れば死神さんだって万々歳なんでしょう?」  今度は死神は恭一郎に言われて納得する番だった。 「よし、判った。ちょっと待っていろ」  そう言ったかと思うと死神の姿が風のように消えていた。  ひとりになって見ると恭一郎は今あったことが事実かどうか自信が無かった。だってそうだろう、得体の知れない老人がいきなり現れて自分が『死神』だと名乗り、あまつさえ独身の自分の嫁さんを世話してくれるという。そんな都合の良い現実があるとは思われなかった。 「きっと夢だ。これは俺が見ている夢なんだ」  そう思い込むことにした。だが、その決意も直ぐに破られる。さっきの『死神』と名乗った老人が再び現れたのだ。しかも今度は白いブラウスにミニスカート姿の髪の長い女の子を連れていた。 「よう、待たせたな。約束通り連れて来てやったぜ。この前に居るのが恭一郎だ。歳は多少喰ってるが気のいいやつだ。挨拶しな」 「初めまして、この度死神のおじさまから紹介されました、たま、と申します。どうぞ宜しくお願い致します」  三指をついた丁寧な挨拶に思わず恭一郎も 「あ、初めまして恭一郎と申します。どうぞ宜しくお願い致します」  両手をついて挨拶をしてしまった。
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