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殆ど人間みたいなものって、人間じゃ無いと言うことじゃないかと恭一郎は思った。それと同時に、自分が猫好きであること、このまま暮らしていても嫁さんは愚か、彼女だって出来やしないと判ってることを考えるのだった。
「あのさ、子孫繁栄って、やはりすることするの?」
「勿論です! それは人間も猫も変わりません。大丈夫です。わたしの一族は多産系ですから、いっぱい恭一郎様の子供を産んで見せます」
「いや、見せますと言われてもなぁ~」
「駄目でしょうか? 恭一郎様素敵です!」
そんなことを言われたのは初めてだった。いま、目の前の美少女を見ていると、人間ならば何の文句もない! ならば何が問題かと恭一郎は自問自答した。答えはやはり、この“たま”なる娘が一見美少女に見えるが本当は猫で、自分が見ている姿が幻ではなかろうかということだった。
「もし、一緒になれたら、恭一郎様は文字通り、わたしのご主人様になります。毎日『ご主人様行ってらっしゃいませ』とか『お帰りなさいませご主人様』とか言えます。それを言うのが夢だったのです」
何と言う健気さだろうか。だが、恭一郎にはそこまでやるならもうひとつだけ確認したいことがあった。
「その時の格好は?」
「勿論! エプロン姿です。エプロンだけでもいいですよ」
「じゃあ、もしかして、『猫耳』なんかは?」
「得意ですニャ」
たまはそう言って艶やかな髪の毛の間から可愛らしい小さな三角の耳を出して見せたのだった。
決まりだ! 恭一郎は心の中で喜びの声をあげた。全て叶った。自分の人生で、可愛くて、髪が長く、巨乳で脚が綺麗で、そして従順で、おまけに「猫耳」まである。しかも本物! これ以上望むものがあろうか。
「判った! こちらこそ宜しくお願い致します」
恭一郎はたまに向って頭を下げた。
それから数年後、恭一郎とたまの間には沢山の子供が生まれ、日本の少子化を食い止める一助になったのだった。めでたしめでたし。その頃、死神は
「全く、俺も気が長いよな。生まれた子供が寿命で死ぬことを待ってるんだからな。だが猫の子なら寿命はそんなに長くはないだろう。それだけが救いさ」
二人の家の屋根の上で死神は呟くのだった。
了
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