27歳、会えなくても

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木枯らし一号が吹いた。 その冬の便りを知ったのは、地下鉄の車内にある電光掲示板のニュースからだった。 11月の第1月曜日。 温暖化の影響で冬風が弱くなっていることから例年より観測が遅くなるのではないかという気象庁の予測は見事に外れたようだ。 今朝、家を出てからあざみ野駅に向かう途中、顔と身体に感じる冷気がより一層鋭くなったように感じたのはこのせいかと、百々子は納得する。   視線を電光掲示板から窓の景色に戻すと、よしっ! と気合を入れる。 高島町駅を過ぎたあたりでつり革から手を離し、電車の揺れに気をつけながらそっと扉の方へ移動する。 桜木町ー、桜木町ー。   アナウンスと同時にプラットフォームへ下りると、百々子は一目散に駆け出した。 エスカレータに並ぶ長蛇の列を素通りし、ローヒールの音を響かせながら階段を一気に駆け上る。 まばらになった人波を器用に掻き分けながら地上に出ると、見上げた先には横浜ランドマークタワーが大きくそびえ立っている。
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