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「ウソ……本当に?」
「ウソなんてつくわけないじゃないですかぁ……」
うぅ、と由希が半べそで唇を歪ませる。
「今度式場に下見に行くって言ってたのは……」
「全部なしです。
完全に終わりました」
「完全に終わったって……由希ちゃん本当にいいの?
彼のこと大好きだったのに……」
「私、どうしても納得できなくて別れたくないって言ったんです。
そしたら彼が『仕事を辞めたら考えてやる』って言ったんです。
そんな急に言われても簡単に決断できることじゃないじゃないですか。
第一、仕事を続ける約束で婚約したのに。
返事に渋る私に、アイツ何て言ったと思います?
『俺より仕事の方が大事なんだな』って言ったんですよ!?
その一言で一気に冷めましたね。
百年の恋も冷めるってこういうことなんだなって思いました」
「うわぁ、そんなこと言われたんだ……」
「だから言ってやりましたよ。
安月給のくせによくそんなこと言えるなって。
私が仕事を続けると決めたのはあんたの収入が低いからだろって!」
確かその彼は由希より三つ年上だったはず。
年下の彼女から放たれた言葉は相当刺さったに違いない。
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