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「……じゃ、またね」
門扉をくぐろうとしたその時、
「百々子」
突然、呼び止められた。
ゆっくりと振り向く。
「……俺、お前に泣かれたらどうしたらいいのか分からないけど、
でも、お前には泣いて欲しいと……思う」
真剣な眼差しだった。
たどたどしい台詞から透が不器用に言葉を選んでいるのが伝わってくる。
「お前は全部、一人で抱え込もうとするから……
無理してしまう奴だから。
泣きたくなったら泣けよ。
我慢するな。
もし、お前に泣く場所がないのなら――せめて、俺がお前の泣ける場所になりたいと思ってる」
「……」
「……だから、泣きたくなったらいつでも俺んとこに来い」
そう言うと、恥ずかしそうに視線を逸らした。
「それだけ。じゃあな」
透は踵を返し、走りながら去っていった。
彼の後ろ姿が涙で滲む。
見つめる瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
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