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うぅ、と百々子は呻きながら抱き締める手に精一杯力を込めた。
「……何、してんの」
耳元に硬い声が届いた。
ようやく反応を見せた透の身体はひどく強張っていた。
「抱きしめたくなったから。
頑張ったねって。
小さい頃の透を今、私が抱きしめてるの」
何度でも抱きしめるよ。
何度でも、何万回でも。
あなたは決してひとりじゃないから。
みんなあなたのことが大好きだからね。
「……ありがとう」
その声は泣いていた。
たとえようのない愛おしさが尽きることなく込み上げてくる。
あなたの弱さもぜんぶ丸ごと受け止めて、私があなたを守ってあげる。
百々子はしばらくの間ずっと透を抱きしめていた。
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