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その夜、玄関前に帰りついたのは午後九時を超えていた。
大切な家はもう目の前だというのに、足がすくんでしまう。
今日も透に会えないのかな……。
切なさと痛みで、ズキンと胸の奥底が音を立てる。
気を取り直すように鞄から家の鍵を取り出そうとしたその時、唐突にドアが開いた。
「お帰り」
ウソ……。
突然現れた彼を見て、一瞬夢を見てるのではないかと思った。
迎え入れてくれたのは、会いたくて会いたくて仕方がなかった彼――透だった。
「足音聞こえてきたから、もしかしてと思って。
久しぶりだな、元気だった?」
「……どうして?」
どうしてここにいるの?
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