27歳、触れたくて、触れられたくて

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「あれ、俺今日帰るってメッセージ入れたつもりだったんだけど、もしかして届いてない?」 鞄からスマホを取り出し、未読のメッセージに目を落とす。 通知が届いたのは夕方頃だ。 「もうちょっと早く連絡してよ……」 遅いよ、バカ。 「長い間家を空けてごめん。 お帰り百々」 “百々” 透にそう呼ばれるたび、心臓が鷲掴みされたようにとらわれてしまう。 ――ずるい。 次会ったら、たくさん文句をつけてやろうと思っていたのに。 あんたの顔見たら嫌味も皮肉も全部吹っ飛んでしまったじゃない。 「……透も、お帰りなさい」 「ただいま」 透が優しく笑うから、百々子もつられて笑った。
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