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玄関に上がるなり、透は百々子の手からさりげなく荷物を奪い取った。
迎え入れてくれる時、必ずと言っていいほどそうする。
彼の優しい癖だ。
「ごめんね、お腹空いたでしょ?
急いでご飯作るからもう少し待ってて」
たしか冷蔵庫には残り物の食材しか入っていなかったはず。
こんなことになるなら、きちんと補充しておくべきだった。
せっかく久しぶりに二人で過ごせる夜なのに。
「ああ、それなら作っておいたから大丈夫」
え、と百々子は動きを止めた。
「きっと疲れているだろうと思ったから。
でも俺が作ったものだから味の保証はできないけど」
料理苦手なくせに、しかも自分だって疲れてるくせに。
透の濃やかさに百々子は少し戸惑いつつ、ありがとうと呟いた。
嬉しかった。
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