27歳、触れたくて、触れられたくて

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玄関に上がるなり、透は百々子の手からさりげなく荷物を奪い取った。 迎え入れてくれる時、必ずと言っていいほどそうする。 彼の優しい癖だ。 「ごめんね、お腹空いたでしょ? 急いでご飯作るからもう少し待ってて」 たしか冷蔵庫には残り物の食材しか入っていなかったはず。 こんなことになるなら、きちんと補充しておくべきだった。 せっかく久しぶりに二人で過ごせる夜なのに。 「ああ、それなら作っておいたから大丈夫」 え、と百々子は動きを止めた。 「きっと疲れているだろうと思ったから。 でも俺が作ったものだから味の保証はできないけど」 料理苦手なくせに、しかも自分だって疲れてるくせに。 透の濃やかさに百々子は少し戸惑いつつ、ありがとうと呟いた。 嬉しかった。
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