27歳、離れていく距離

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母親の面会には毎回一人で行った。 仕事が終わるとダッシュでタクシーに乗り込み病院に向かう、そんな生活が毎日続いた。 この二週間で変わったことがいくつかある。 幸いなことに母の容態は危機的状況を脱出し、集中治療室から一般病棟に移ることが決まった。 激しい頭痛や吐き気といった辛い症状を乗り越え、今では少しずつだが食事も摂れるようになり、回復の兆しが見えて来ている。 社会復帰を目指し、リハビリに励む母の姿には何度も勇気づけられた。 まだ油断はできないが、透とすれ違う生活が続いていく日々の中で、母の回復は唯一の救いだった。 母の笑顔を見れるようになっただけでも幸せだと思うことにして、なるべく透と綾のことは考えないように努めた。
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