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「透くんは元気?」
一般病棟に移ったその日、母が尋ねてきた。
透の話は一切してこなかった。
一方的に避けていた。
しかし、長年一緒にいる恋人の話題が出てこないとなると、さすがに不思議に思ったのだろう。
「……うん、元気だよ」
透にはまだ母の件は話せていない。
もうこれでいいのだと自身を欺く。
「透、仕事が忙しいみたい。
お母さんのことすごく心配してたよ。
面会に伺えなくてすみませんって言ってた」
笑顔で取り繕えば取り繕うほど、心がすり減っていくような気がする。
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