897人が本棚に入れています
本棚に追加
休みが明け、花澄と顔を合わせれば、愛しさと気まずさが同居している胸の内に気付かされる。
いくらなんでも早々と吹っ切れた筈はないだろうが、平然と業務をこなして見える裏で、何を抱えているのだろう。
しかし彼女の想いを汲むのであれば、俺の身勝手な感情などを表すべきではないと、抑えるよう努めた。
正社員を目指すことを決めたようで、邪魔もしたくなかった。
翌週には、花澄の誕生日がやって来た。
何らかの祝福を贈りたいのはやまやまだったが、求められてはいないことくらいは重々承知していたので、わきまえた。
寧実からは、1週間余りが過ぎ去っても何の反応もなかった。
このまま連絡を取り合わなければ、別れたことになるだろうかと巡らせながら、俺の心はもう一つの目的に向かいつつあった。
花澄のレポート発表会や面談が終わったタイミングで、計画の決行に踏み切った。
8月に入ってすぐの暑い日だった。
最初のコメントを投稿しよう!