進展

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メールの送信を見届けて、共に設計室を後にした。 近頃は中薗さんが利用している地下鉄の駅まで、一緒に帰ることが増えて来ている。 先日食事の際は終電が迫っていた為、最寄りである地下鉄を使ったが、普段はもうひとつ遠い別の線に乗車している。 薄闇に包まれた街灯の下を歩きながら、遠目に残る没み掛けた夕日を眺めた。 「付き合わせちゃったな。悪い」 声を掛けられて目線を移すと、やや決まり悪そうに、こめかみ辺りを掻いていた。 リフレッシュルームでの甘えた態度について言っているのかと巡らせると、自然とはにかんでしまう。 薬が効いてきたのか、幾分顔色が良いように見て取れる。席へ戻って直ぐに飲んで貰っていた。 「明日の朝、ちゃんと病院行って下さいよ?」 「はーい……」 全く世話が焼けると眉を下げる。 唇を尖らせて念を押した。 力ない返事すらも可愛く思えて来るのだから、重症なのはわたしかも知れないと唇を噛んだ。 しかし先程の有り様を振り返ると一抹の不安が過る。 「中薗さん、一人暮らしですよね?」 「うん」 「……大丈夫です?」 「これくらいの風邪、何とでもして来たよいつも」 口元へ手を添えつつ疑いの眼差しで見上げると、心外とばかりに冷ややかな流し目が返って来た。 「ご家族は……」 「実家、結構な遠さだからね」 淡々と答える伏し目を眺めていたら、怖いもの見たさのような感覚が沸いて、声に乗せる。 「いざとなったら……呼べる人、いますもんね」 「…………そうだな。彼女呼ぶわ」 軽く手を振ると、地下へと潜って行った。 確かめておかないと、勘違いしてしまいそうだということもあった。 けしかけておいて傷付くなんて、身勝手な心を思いながら、後ろ姿を見送った。
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