後悔という名の代償 Toru Miyase

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女性は涙を滲ませながら少年の頬を優しく指でなぞっている。 この人は誰? 視界がかすんではっきりしない。 「ごめんね透。 お母さん、透と一緒にいるのが辛いの。 弱虫なお母さんを許してね」 どうして行くの? いやだ、行かないで、お母さん。 おれを置いて行かないで。 ひとりにしないで。 少年の心の叫びが、痛いほど胸に突き刺さって来る。 あの少年は誰だろう? あれは――まだ12歳の――。 そこで透は目が覚めた。 「あ、起きた? ちょうど30分経ったとこ」 夢? どうして今さらこんな夢……。 過去はとっくの昔に切り捨てたはずなのに。
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